第一回

 

LIFE  加島祥造 書・画・文/PARCO出版

吉沢 保人(図書館職員)

 

以前図書館が主催する「老子を読む」という読書会があり、私も参加していました。

二千数百年の時空を超えて現代に蘇る、生命への温かい思いやりを持つ老子のメッセージについて、講師の故・木村喜久雄先生の解説を交えたお話を通して学び、老子の世界に浸ることができました。

  今回私が紹介したい本は、この読書会のテキストとして使われた「LIFE」です。この本には現代を生きる私たちの心に響く老子の「命の言葉」が収録されています。加島さんはこれまでの難解な老子と異なり、平易な現代日本語訳を通して、新鮮で独自の「老子」の世界を作り上げました。自然の美しさを感じ、あるがままに生きることの尊さをうたった句を著者が筆で表した「書」に解説が添えてあります。

 この本の帯には「君の命はいつも君だけを愛してる」という言葉が書かれています。

 これは人間が生かされているという発想からでた言葉で、命の側から見れば、あなたを生かし、愛し、育てようとしている、自分の体を造っている60兆個の細胞は、私たちが寝ているときでも起きているときでも、片時も休まずあなたという人間の1個の生命体を支えて生かしてくれている、だからあなたもその愛を受け入れ、生かされていることを大切に思うということです。

 私自身大病を患い、生死をさまよいましたが、周りの方々の看病のおかげで今があります。このことで私の身体と周りの方々が一体となって私を生かしてくれていると感じています。

この本で、加島さんが長年愛し続けている老子の言葉を一句一句味わって読んでいくことで、私たち現代人を励まし、勇気づけてくれる老子のメッセージを感じ、身体の芯からエネルギーが湧き起こってくる感じがします。

 木村先生が老子の言葉を自分の言葉にしておっしゃった「自然体で、あくせくせず、力みすぎず、ゆったり生きればいい、そして一人の人間として、肩書・地位・財産・実績等々全く関係なく誰もみんな公平に生かされていることを忘れてはならない、そして今日・今を本気に生きなければならない、それには今・この時に自分のなすべきことをなすこと、完全燃焼すること、そこに道は必ず開ける」との解説は今でもはっきりと胸に刻まれています。